大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和50年(ワ)6326号 判決 1977年10月14日

主文

別紙一記載の債権転付の効果を否認する。

被告椿本興業株式会社は原告に対し金七〇六万〇、五三〇円および昭和五〇年一二月二日以降支払済みに至るまで年六分の割合による金員を支払え。

被告日機工業株式会社は原告に対し金四五一万九、八七七円を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

この判決第二、第三項については仮に執行することができる。

事実

第一  (当事者の求める裁判)

(原告)

主文同旨の判決並びに仮執行の宣言。

(被告ら)

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする、

との判決。

第二  (当時者の主張)

(請求原因)

(一)  訴外興亜機械株式会社(以下興亜機械という。)は昭和四〇年二月一五日頃不渡手形を出し銀行取引停止処分を受けて支払を停止し、昭和五〇年八月七日補助参加人株式会社和信商会(以下和信商会という。)の申立により同年九月一九日午前一〇時当裁判所において破産の宣言を受け、原告は同日その破産管財人に選任された。

(二)  被告日機工業株式会社(以下被告日機工業という。)は興亜機械の支払停止の事実を知りながら自己の同会社に対する債権を保全するため、昭和四〇年二月二四日同会社との間に別紙二記載のとおりの準消費貸借契約を締結して公正証書を作成し、その弁済期日に支払がなかつたとして別紙一記載のとおりの債権差押・転付命令(以下本件転付命令という。)を得た。

(三)  右行為は破産法七二条一号、二号に該当し、被産者が他の一般債権者に不利益を生せしめることを知つてなしたものというに妨げなく、かつ被告日機工業はこれを了知していたものである。

(四)  被告日機工業は本件転付命令に基づき、昭和五一年四月一九日被告椿本興業株式会社(以下被告椿本興業という。)より別紙二記載の債権のうち四五一万九、八七七円(残元本に対する昭和四〇年四月一日から同五〇年一二月一日までの遅延利息として)を受領した。

(五)  よつて原告は、本件転付命令を否認し、被告椿本興業に対し被告日機工業が本件転付命令によつて取得した七〇六万〇、五三〇円(転付命令に表示の七三一万六、一〇五円のうち昭和四〇年二月二一日現在被告椿本興業が興亜機械に対し現実に負担している金額)およびこれに対する履行期後である昭和五〇年一二月二日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払、被告日機工業に対しその受領した前記四五一万九、八七七円の支払を求める。

(請求原因に対する答弁)

一  (被告日機工業)

請求原因事実(一)は不知。同(二)のうち被告日機工業が興亜機械との間で別紙二記載のとおりの公正証書を作成し、これによつて別紙一記載のとおりの転付命令を得た事実は認め、その余は否認する。同(三)は否認し、同(四)は認め、同(五)は争う。

二  (被告椿本興業)

請求原因事実(一)は否知。同(二)のうち別紙一記載のとおりの差押転付命令があつたことは認めその余は不知。同(三)は不知。同(四)は認め、同(五)は争う。

(被告日機工業の積極主張)

(一)  昭和四〇年頃の興亜機械の債務は和信商会に対する商品買掛債務等七〇六万〇、五三〇円であつて他になく、右債務が本件否認権の基礎とされている。しかしながら、右は商事債権であつてその履行期である昭和四〇年二月二一日から五年を経過した同四五年二月二一日をもつて時効により消滅しているから本訴においてこれを援用(予備的に債権者代位権に基づいて)する。

(二)  被告日機工業が本件転付命令を得た当時興亜機械の支払停止の事実を知らなかつたし、その後一〇年余になされた破産宣告も知る由もなかつた。

興亜機械が昭和四〇年二月一五日頃に不渡手形を出したとしても、これをもつて直ちに支払停止があつたものとはいえない。

三 (補助参加人の主張)

興亜機械が破産宣告を受けたのは和信商会の昭和五〇年八月七日申立によるものであり、この手続において大阪地方裁判所は和信商会の興亜機械に対する債権の存在をも認定し破産宣告をなした。

和信商会は昭和三八年八月一九日興亜機械に対し、横浜市役所塵埃焼却場向け電気用品(門型バケツトクレーン一基、天井走行バスケツトクレーン二基)を代金一、一三〇万円で売渡し、これを一二月四日に納入したことによる売買代金債権を有していた。右売買代金の内、三〇〇万円については昭和三九年一二月二七日、一〇〇万円については昭和四〇年一月三一日に支払いがあつた。また、二三万九、四七〇円相当の未納品が後日発見された。残額七〇六万〇、五三〇円についてはその弁済として、昭和四〇年二月二〇日に興亜機械の被告椿本興業に対する前記電気用品の売却代金債権を興亜機械から和信商会に債権譲渡された。和信商会は昭和四〇年六月一五日当裁判所に被告椿本興業を相手方として右譲受け債権の支払を求めて訴を提起し、同四四年四月九日勝訴の判決を得た。しかし控訴審である大阪高等裁判所は昭和四八年一一月二二日被告椿本興業の参加人である被告日機工業の主張を容れて興亜機械から和信商会に対する右債権譲渡を詐害行為として取消し、昭和五〇年七月一七日最高裁判所は上告棄却の判決をした。従つて和信商会が興亜機械に対して履行請求できるようになつたのは前記債権譲渡の詐害行為による取消判決が確定した昭和五〇年七月一七日であるから消滅時効はこの時点から起算されるべきものである。

第三  (証拠)(省略)

(別紙一)

債権差押・転付命令の表示

事件番号 大阪地方裁判所昭和四〇年(ル)第七一三号、同年(ヲ)第七六五号

裁判日 昭和四〇年三月三〇日

当事者 債権者 日機工業株式会社

債務者 興亜機械株式会社

第三債務者 椿本興業株式会社

債務名義 別紙二記載の公正証書の執行力ある正本

目的債権 七三一万六、一〇五円。 興亜機械株式会社が椿本興業株式会社に対し昭和四〇年九月二九日現在有する二・七立米掴みグラブバケツト付き天井クレーン二基および一・二立米掴みグラブバケツト付き門型クレーン一基の売掛代金二、〇三一万六、一〇五円のうち既払金一、三〇〇万円の残額債権であつて年代の古いものから順次右金額に満つるまで。

(別紙二)

被告日機工業株式会社の債務名義の表示

大阪法務局所属公証人伏見正保作成更第二三、六二八号準消費貸借契約公正証書

作成日 昭和四〇年二月二四日

金額 八一〇万八、五八〇円

弁済期 昭和四〇年二月二七日

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例